fCalcの使用法

 フリーの光学計算ソフト、fCalcの使用法を簡単に説明します。

fCalcのダウンロードはここからTangentSoft


2003年4月1日、文責:神原幹郎
2004年9月1日、ノンフレーム版に改訂
ご感想、ご批判、ご助言を頂きたいので是非神原までメールお願い致します。

1 f Numbers(f値、日本ではF値が一般的)

480fNumber.jpg

  2つの値(露出に関連する値)を与えて3っつ目の値を求める。

  日本ではF値が一般的と申しましたが、Fは絞り、fは焦点距離 を表すことになっているからです。

  さて、2通りのやり方があります。

  絞り値F1を決め、それから露出をn段変化させた時に絞り値が どう変わるかを求める場合。絞り値F1を決め、絞り値F2にするには露出を何段変化させたらよいか を求める場合です。

  露出をn段変化させるには、

  1.絞りをn段絞り込む、又はシャッタースピードをn段早める。

  2.絞りをn段開放する、又はシャッタースピードをn段遅くする。

  があります。前者の場合はnはプラス、後者の場合はマイナスの数値となります。

  上のイメージは、絞りがF=8の時、露出を3段開放すると、結果的に 絞りFがF=2.8になることを示しています。

  絞りをn段、シャッタースピードをn段、と言う場合の「段」はストップ(またはフル・ストップ) ともいいますが、1「段」の上げ下げはレンズを通る光の量が2倍もしくは半分になることです。

  絞りはF=1、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22、32、45、 と並んでおりますが、その並び方は「2」倍の「2」の平方根(1.414)を順繰りに掛けていったものです。単純な 「2」倍ではなく平方根にするのは、絞りは元々F=f/D(焦点距離をレンズの直径で割る)の関係があり、 光の量はレンズの面積と1対1の関係ですが、レンズの直径とは平方根の関係になるからです。

  シャッタースピードは、開放、1, 1/2, 1/4, 1/8, 1/15, 1/30, 1/60, 1/125, 1/500, 1/1000と並びますが、これは順繰りに半分づつになっていますね。

  適正露出が今、絞り5.6、シャッタースピード1/60秒としますと、 絞り2.8、シャッタースピード1/250秒でもカメラに同じ量の光が入りますが、映った写真は 違って見えます。前者のほうがピントの合っている度合いが大きいのです。これは被写界深度の項目 をご覧下さい。

  fCalcのこの計算が特に役立つ場合は、例えばf=28-105mmズームレンズがF=3.5-4.5 の性能を持つ場合、F=3.5というはんぱな絞り値があり、これはF=2.8と比べて 何段階暗いかというのを計算するのに便利です。



 簡単な絞りとシャッタースピードの関係の説明は ここをクリック

2 Depth of Field (被写界深度)

480DOF.jpg

 被写界深度の計算です。デジカメの被写界深度どうして大きいのか,どうして 「ボケ」味が足りないのか詳しく説明します。

 ここで注意していただきたいのは、焦点のあっているのは「点」ではなく、 「点」の集まりの「面」(正確にいえば球面)だということです。英語ではfocal(焦点の) plane(面)とあります。


 焦点が完全にあった面の前後の、肉眼では充分シャープだと識別できる 範囲を被写界深度(一般的に言うとピントが合っている範囲)といいますが、4っつの値を入力して、 レンズからピントの合っている近い方の面までの距離(Near近)、後ろへの距離(Far遠)、そしてFarと Nearの差(Total)を求めます。

 入力値は、

 1.レンズの焦点距離(Focal length)。

 2.対象までの距離(Subject distance)。

 3.絞り(Aperture)。

 4.錯乱円(Circle of confusion)。

 です。

 上記のイメージでは、35mmフイルムのカメラ(つまり錯乱円は0.02501)で、f=38mmのレンズ を使い、5m先にある物体に焦点を合わせ、絞り値をF=2.8にした時、焦点から手前側の ピントの合っている面までの距離(Near近)が4.02m、焦点から後ろ(Far遠)は6.61mに「ピントが合っている」 という結果が得られています。FarからNearを引いた値Totalは2.58mとなります。

  同じ条件で、絞り値だけをを変化させてみますと、絞りの値を大きくすると(つまり絞ると)被写界 深度が大きくなることが分かります。逆に絞りを開放すると被写界深度は小さくなり、これはピントの 合っている範囲が狭いということですから、被写体の前、後ろのボケ具合は大きくなります。

 35mmのカメラの錯乱円は、fCalcではCoC=0.02501と与えられていますが、 錯乱円という概念は色々な条件で変化するので、ひょっとして頭を「錯乱」させる概念からこんな名前 がついたのかと思いたくなります。巷ではまったく当てにならない数値だと決めてかかる写真愛好家も おります。

 実際的な錯乱円について簡単に説明しますと、肉眼の解像識別能力を、ある距離に離れた 肉眼が単位幅当たり引かれた複数の線の何本まで識別できるかと観察的に決め、それをもとに今度は 一定の大きさにプリントした写真の対角線と元のフィルムの対角線との比に肉眼の解像識別能力をかけた値を 解像因子とし、その逆数を錯乱円と決めているようです。例を挙げて言うと、肉眼は25cm離れた 距離にある1mmの間に引かれた線が5本までは識別出来ると観察されますと、対角線が325mmの プリント紙と35mmフィルムの場合のフィルムの対角線43mmとの比に肉眼の解像力5をかけた値 (解像因子)は1mmあたり37.8本となります。この逆数(1/37.8)=0.026が35mm カメラの錯乱円となります。従って、錯乱円は肉眼の解像識別能力をもとに、どんな種類(大きさ)の フィルムを使っても一定の大きさにプリントした結果の比較となりますので、科学的根拠が充分あり、 映像の大小にかかわらず使用できる値だとご理解下さい。ただし人によっては、肉眼の解像識別能力を6本/mmとか 8本/mmという場合もあるそうですし、プリントの質(引き伸ばし機のレンズが悪い場合やプリント紙 の紙質の良し悪し)にも影響されます。

 デジカメの錯乱円は、CCDの対角線の長さが判れば計算出来ます。

 身近なところで例を挙げますと、私のデジカメはオリンパスのC2100UZ ですが、このデジカメのCCDは公称1/2インチ(対角長さ)とされています。CCDの規格は歴史的に撮像管時代の管径を踏襲した表記 だそうで、公称1/2インチ(13mm)でも実際は8mmしかありません。この数値と肉眼の解像識別能力 5本/mmとプリント紙の対角線325mmから、解像因子は、5x325/8=203.125と 求められ、錯乱円はその逆数の0.004923となります。

 この値を使って、私のデジカメと35mmカメラの被写界深度の違いを比較 して見ましょう。

 先ほどの35mmカメラのレンズの焦点距離38mmの相当するオリンパス C2100UZの焦点距離はf=7mm、錯乱円は0.004923を使いますと、

480DOF2.jpg

 手前側はNear=2.07mまで、後方はFar=Infinity(無限)までピントが合います。

 35mmカメラでは手前4.02m、後方6.61mの被写界深度ですから、 同じ条件で比較したこれらの結果が示すのは、一般のデジカメは35mmカメラよりはるかに大きい 被写界深度を持つ、ということです。逆に言うと「ボケ」の度合いが小さいので良いボケ味が出しにくい ということにもなります。この被写界深度の大幅な違いは,

 1.一般のデジカメのCCDの大きさが35mmフィルムに比べてかなり小さいこと。

 2.一般のデジカメのレンズの焦点距離が35mmカメラに比べて極端に短いこと。

 によります。


 被写界深度の簡単な説明は、ここから

3. Hyperfocal distance(過焦点距離)

480HyperD.jpg

  過焦点距離(無限遠が被写界深度にはいるもっとも近い距離)の計算です。

  過焦点距離は被写界深度の範囲の最も遠いものが無限ぎりぎりにした時 の焦点距離です。そして手前側のピントの合っている面も、遠い側が無限である条件で、カメラから 最も近くにある場合となります。逆に言うと最大の被写界深度(DOF)は、過焦点距離 (H)を最適な値にした時得られ、その関係はDOFのNear=H/2(Farは勿論無限)です。


  インプットは3っつの値を指定します。

  1.レンズの焦点距離(Focal length)。

  2.絞り値(Aperture)。

  3.錯乱円(Circle of confusion)。

  例として挙げたイメージでは、35mmカメラで(つまり錯乱円が 0.02501)、レンズf=80mm、絞りF=8,の場合過焦点距離が約32mと計算されます。

  被写界深度のもっともカメラに近い側は過焦点距離の半分ですので、 約16mから無限までの広い範囲でピントが合っていることになります。

  同じ条件で私のデジカメ、オリンパスC2100UZ、では、 f=14.73mm(35mmカメラのf=80mmに相当)、絞りF=8,錯乱円0.004923 のインプットで、過焦点距離は5.51mとなり、2.8mから無限までピントが合うこととなります。 ここでも一般のデジカメのピントの合う範囲が35mmカメラよりも広いことが分かります。

4. Field of View (写野、実視界)

480FOV.jpg

  写真のフレームの中に入れられる対象の、最大の大きさ (縦・横の長さ)の計算です。

  インプットは3っつの値を指定します。

  1.対象までの距離(Suject distance)。

  2.レンズの焦点距離(Focal length)。

  3.フィルムの形式(Film format)。

  例に挙げたイメージでは、35mmカメラで300mはなれた物体をf=300mm の望遠レンズで見た場合、フレームの大きさ、つまりフレームにはいる最大の大きさの物体は、 縦(Vertical)35.976m, 横(Horizontal)53.964mあることになります。

  フィルム形式での入力なので、この項目は一般のデジカメには使用できない のが残念です。但し、計算式はヘルプファイルにありますのでそれを使って計算をすることが できます。APSサイズはあるので、キャノンのD60や、ニコンのD100には使えます。

  ご注意していただきたいことは、ここで言う実視界と画角の定義が 曖昧で、実視界を角度で表す場合もあります。

5. Angle of View (画角)

480AOV.jpg

  無限遠の対象の垂直方向、水平方向、対角線方向 の画角の計算です。

 入力値は、

 1.フィルム形式(Film format)。

 2.レンズの焦点距離(Focal length)。

 です。

  例に挙げたイメージでは、35mmフィルムでf=80mmのレンズを 使った場合、画角は縦17.06度、横25.36度、対角方向では30.26度あります。

  この項目もフィルム形式入力なので、残念ながら一般のデジカメには 適用できません。但し、計算式はヘルプファイルにありますのでそれを使って計算をすることができます。

  この計算法で、

  35mmカメラで50mmのレンズを使った場合と同じ画角を 4x5フィルムで得るには、どんなレンズを使ったら良いか、といったことが計算できます。 (答えは約180mm)

6. Magnification (倍率)

480Mag.jpg

  レンズの焦点距離と対象までの距離を与えて倍率を求めます。 倍率は対象物のフィルムに捕らえられた大きさを、実際の大きさと比較した時の割合です。

  例に挙げたイメージでは、200mmの焦点距離をもつレンズで 100m先の物を見たら、倍率は0.002004で見えることを示しています。例えば10mの 高さの木はフィルム上では約2cmの大きさで映っています。

  この計算はフィルム形式(デジカメの場合はCCDの大きさ)とは 独立していますから、一般のデジカメでも使えます。

7. Spot Metering (スポット測光)

480SMeter.jpg

  カメラが持つスポット測光機能は一般的にフレームの何%かで 表されますが、それを画角に変換する計算です。

  例に挙げたイメージでは、35mmカメラでf=50mmのレンズ をつけ、カメラのスポット測光がフレーム中央9.5%(測光の形状は円だと仮定しております)を カバーするとしますと、それは画角では11.67度となることを表しています。

  fCalcのこの機能もフィルムサイズの入力ですので、一般 のデジカメには応用出来ません。ヘルプファイルに計算式がありますので、それで計算して下さい。

   このウェブページは「月間デジカメ作品第4号」の記事の一部です。 「月間デジカメ作品第4号」へは http://digicamworks.net/Gekkan/Apr03/Gekkan4.htmlをクリックして下さい。